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正直、獅童さんからは至極怪しい匂いがしたし、彼の後を継ぐかどうかはのちのち考えれば良いと思っていた。
当時は面倒なことはなるべく引き受けたくなかったという本音がある。
普通に生活できれば、それで良かったのだ。
『そうか。この件は施設の者に通しておく。
それと1週間後、時間はあるか?』
『……あります、けど』
『なら、ひとまず僕の仕事場まで着いて来てもらいたい』
急な展開すぎて驚いたけれど、認められているみたいで嬉しくてすぐに頷いた。
獅童さんの背中は大きく、頼もしいオーラを纏っていて、俺もこんなふうになれるのかという不安に襲われる。
施設の人に話をしに行った獅童さんを眺めていると、ふと背後から視線を感じて後ろを振り向く。
すると、物寂しげに弾がこちらを見つめていた。
『麗日、行っちゃうの?』
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