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『麗日』
獅童さんは今日も黒いスーツを着こなし、来るなり低い声で俺の名前を呼んだ。
ほかの施設の子どもたちは、その様子を観察していた。
施設で浮いていた俺が、獅童さんのような一風変わった人に連れて行かれるのが興味深いのだろうか。
ひとまず周りの目はどうでも良かったけれど、弾の視線がやはり気になった。
だけど、弾はこのとき俺を見ていなかった。
ひとりで窓の外を眺め、孤独と耐えていた。
獅童さんの隣を歩きながらそれを見たとき、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
『どうした?』
俺が考え込んでいるのを見て、獅童さんは尋ねてくる。
『……いや、なんでもないです』
後ろ髪を引かれる思いで施設を離れ、真っ黒な高級車に乗せられた。
しかも、運転手がいるらしい。
……こんな高級車に乗り、運転手やボディーガードをつけ、施設に莫大な寄付金を送る獅童さんって何者なんだ。
ふと怖くなり黙っていると、獅童さんが気さくに話しかけてくれる。
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