突然の訪問者

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大公様の戻りを会場の片隅でただ待つ 人の行き来がスローモーションで見えるくらい 待ってる時間が長く感じる 「ご一緒にダンスいかがですか?」 「ご、、ごめんなさい、私踊れなくて、、、」 何人かの男性が声をかけてくれたが 踊ったこともなく断り続けると 会場にも居づらくなり、庭園に身を寄せる 「綺麗」 皇宮の庭園は、息を飲むくらい美しくて 月明かりで庭園の噴水が、宝石が流れて落ちてるように煌めいていた 「リオナ様寒くはありませんか?」 「はい、大丈夫です」 「リオナ様が体調を崩したら大公様が心配いたしますので、あまり長いしないで会場に戻られた方がいいかと思います」 「はい、わかりました」 ここでもファイル様は、私を気遣ってくれる 外の空気を吸って少しは気が 楽になるかと思ったのに 確信のない不安が押し寄せてくる 大公様の温もりを知る前に戻れたなら ただがむしゃらに自分に鞭を打って働き詰めになっていた方がいくらか楽か   だんだん青ざめていく姿を心配した ファイル様が 「リオナ様今日は一旦お帰りになりますか?」 「大公様が早朝にでも戻られるかもしれませんし」 「、、、こちらにお泊まりになるってことですか?」 「、、、お一人で、、」 ハッと自分が無意識に何を言おうとしたか 慌てて口元を手で隠していると 「申し訳ございません ただまだお話が尽きなければ遅くなり 深夜に戻られるより早朝かと私が勝手に 申しただけです」 「私こそ すみません 勝手にお願いして来てしまった」 「遅くなる前に屋敷に戻ります」 「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」 「お辞め下さいリオナ様 私も良かれとしたことです」 「急いで場所を入り口に回します」 この場所で待つ時間が長ければ長いほど要らぬ 憶測をしてしまう どうしてこんなに帰りが遅くなったの? どうして隣国の王女様と一緒なの? どうして一緒に席を立ったの? どうして、、、 そんなこと聞ける立場じゃないのに 大公様は私を哀れんで夫人に迎え入れてくれた 既成事実のために床を一緒にしたそれだけ 「ファイル様、戻りましょ」 その頃  来客間で皇帝と隣国の王女と 談話している大公の元にファイルから伝達が届く 大公からは、リオナを第一にと命令が下っているため今日この会場に来ていたことと待ち侘びて 屋敷に戻る事の知らせが伝わった 大公も多くの時間を王女と皇帝の視察にさいていたため早くリオナに会い癒されたいと願望していた 「陛下、夜も更けてきました 会場内も帰路に向かう者も出て来ましたので 私も屋敷に一旦戻ります」 「詳しい視察内容などは、明日にでも再度報告に参ります」 「テオシリア様は、こちらに滞在ではないのですか?」 「わたくしの護衛も兼ねているとお聞きしましたが」 「何名か信用できる部下を置いていきます メリューダ王女様の安全はお任せ下さい」 「わたくしテオシリア様がいいです」 「ずーと一緒にいたのでその方が安心出来ますし 急にいなくなられたら困ります」 「申し訳ございませんが、何週間も屋敷を空けたままですし新妻が、私の帰りを待ってますので 今日は戻らせていただきます」 「王女様の護衛は再度検討いたします ここは、皇宮でよほどの事がない限り安全かと思いますので気を揉まずお休み下さい」 「テオシリア様に奥様がいらっしゃたんですか?」 「そんなお話し隣国でも聞いた事なかったです 本当にご結婚されてるんですか?」 「はい!とても可愛らしい方で つい最近いい返事を貰って一緒にくらしてます」 先程までとは違い ニコニコ笑顔で答える大公 リオナのことになると、顔が緩みぱなしになってしまう大公に、その場にいた大公の騎士団以外が 呆気に取られてしまった 「それでは、陛下、メリューダ王女様お先に失礼いたします」 リオナを思い浮かべ大公は、屋敷に向かった 大公が去った後 「皇帝陛下、父上とのお話が違います」 「皇帝陛下も父上もわたくしとテオシリア様との 結婚をと今回送り出していただいたと思ってたのにテオシリア様が結婚してるなんて」 「ありえません」 「わたくし今回テオシリア様がやっと迎えに来ていただいたと喜んだのにこんなのはあんまりです」 思いもしなかった事に王女は、泣くしかなく 見かねた皇帝陛下が、宥める様に王女を滞在する部屋に戻した 皇帝もテオシリアのリオナに対する愛が ここまで深いとは思わず 隣国の王女とな婚姻を破棄していなかったのだ 政治的要因はないが 行き遅れの甥に、国産資源の豊かな隣国の王女で テオシリアを慕うのであればと 軽く婚姻の話を持ち出していたのだ ここに来て思わぬ誤算が生じるとは思わず
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