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突然の訪問者
今日も朝早くから、屋敷の掃除や
従姉妹の食事など忙しなく働き詰めのリオナ
合間を見ては、7歳になるジョナサンの
読み書きも教えながら
4歳のセントラルには、
手作りクッキーを作ってあげたりと
下町の仕事がない日でも
忙しく過ごしている
昼食を食べ終え後片付けをしている時に
ほとんど出入りのない屋敷に
馬車の気配を感じ外に出てみると
お世辞にも立派とは言えない馬車から
見覚えのある人物が降りてくる
「叔父様」
びっくりして少し大声になったのか
ジョナサンとセントラルも慌てて飛び出して来た
「お、父様」
ジョナサンは、困惑の表情で
実の父親に目をやった
3人が、声も出せないほど驚いてることすら
気にせず
叔父はズカズカと、
子供達を放置したことも
借金をリオナに押し付けて逃げたことも
何も無かったかのように
たわいもない世間話をしながら
屋敷の客間に向かい、椅子に座り
子供達には目を向けず
自分の要件を切り出すタイミングを
見計らっていた
そんな叔父から、従姉妹達を離すために
リオナは、二人を部屋に戻した
二人がいなくなると
捲し立てるように
「今ある借金を肩代わりして その後も援助も
していただける方と知り合ったんだ」
とニヤニヤしながら
リオナを見ながら
「ただその方は子供が欲しく
若い妻を欲しがっていてね」
「なかなか後妻に入ってくれる人がいなくて困ってるだよリオナ」
リオナは背中が、ゾワゾワ背筋がこおりつく
感覚に襲われたそして
その先の言葉がすぐわかった
「リオナ、お前も嫁に行く機会が、
出来たんだ」
「お嫁に行けば借金が無くなり
ジョナサンやセントラルは
きちんとした生活が出来、もう一度貴族として
不自由ない生活をさせてあげられる」
「それに相手は50歳だが、子供を産めば
お前だって贅沢させてもらえる」
ニヤついた叔父の表情に
同じ空間にいることさえ嫌悪を覚えた
突然やって来たと思ったらなんて
ひどい提案を持って来たの
この叔父は、こちらの意見なんて求めてない
相手方と話を結び
私を連れて行くために
来たに違いない
逃げだそうにも
二人を置いていけない
それに負債をそのままに残してしまったら
領主様、テオシリア大公に申し訳ない
どうすればいいの
悪夢のような事態に
解決策さえでず、だんだんと震え出す
体を必死に落ち着かせようと
何度も呼吸をする
呼吸をしても息苦しさが続く中
バッっと客間の戸が開き
「リオナ!」
慌てた様子の大公がノックもせず入って来た
テオシリア大公は、私を見て
すぐさま叔父を睨みつけ
「借金を姪に押し付けて逃げた男が
今更なぜ戻って来た」
聞いたことがない低く割れたような声
凍りつくような表情で叔父に詰め寄る
突然のことで、叔父も一歩下がり
怪しい笑顔で
「テ、、テオシリア大公様お久しぶりです」
「しゃ、、借金のめどはつきました」
ごまするようにテオシリア大公に歩み寄る
「めどとは、」
険しい表情を変えず、叔父を見下ろしながら
また詰め寄る
「この度、リオナに結婚の話がありまして
大金持ちの商人でして、借金の肩代わりと
援助も、申していただけて、こんないい話はと
出稼ぎから急いで帰って来たのです」
「これ以上のことは、身内のことですので」
悪びれもなくこのような話を、スラスラと
逃げたのに出稼ぎなどと愚かな叔父
でもこれでテオシリア大公様には
身内の醜態をまた見せてしまった
恥ずかしくて顔を上げることが出来ない
「その話は、破棄だ」
テオシリア大公は、
叔父に睨みを効かせながら
ピシャリと結婚話を固辞した
私の腰に手を回し引き寄せられると同時に
「リオナは、私と結婚する」
と思いがけない発言をした
「、、、、」
大公様は、今何と
先に口を開いたのは
豆鉄砲を喰らっていた叔父が、
慌てながら
「大公夫人になるなんて
とても喜ばしいことですが」
「急に結婚なんて、そんな話いつ出たんですか」
と唐突すぎる結婚話に
不信感を示しながら、叔父が
尋ねて来た
声を発してない私も同じように
言葉の真意を聞き入る
大公様は、ゆっくりとはっきり
「子供ができたからだ」
と私に目をやり額に口づけをした
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