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こうして、列車がキタミマサカズ駅に到着するや、岬に半ば突き飛ばされる様にして下車させられる僕。
列車が停車しているそこは――駅というより、普通の一軒家だった。
例えるなら、何処にでもある様な民家――その玄関先にドンと電車が停車している様な、そんなイメージだ。
あまりに違和感しかない光景に、不安になり、きょろきょろと辺りを見回してみる僕。
しかし、当のキタミマサカズさん本人はこの光景にとても心当たりがある様で――。
「ああ、此処は……昔、娘が生きていた時に、一緒に暮らしていた家だ……」
声を詰まらせながら、そう呟いていた。
そんな彼の様子を見ていると、先ほど車掌であるソロウが説明していた“乗客全員で後悔を晴らす手伝いをしなければいけない”ということがいよいよ現実味を帯びて来る。
と、そんな僕の戸惑いを察したのか、キタミマサカズさんがそっと僕の右肩に手を置いて来た。
「君。突然こんな事を手伝わせてしまって、本当に済まないね」
僕を気遣う様に、優しく……しかしどこか申し訳なさそうにそう告げて来るキタミマサカズさん。
僕は、そんな彼に「いえ」と首を振ってみせた。
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