麻生孝也*第50話*けじめ

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麻生孝也*第50話*けじめ

「二人とも、待たせちゃってごめんね」  店のドアから現れた制服姿の成海さんは、慌てた様子でパタパタと階段を駆け下りる。  その姿を未だに可愛いと感じる俺はいけないだろうか。 「全然待ってないから」 「……うん、ゆっくり」  ぼんやりしていた。相変わらず返事をすることにも、一歩遅れた俺。  成海さんは下まで辿り着くと「ありがとう」と言って微笑んだ。  ――が、早くも漂い始めた微妙な空気。  そりゃそうだ、俺がいる。それに俺から話があると聞かされている成海さんは、より気まずいだろうと思う。 「えっと、西園寺さんだっけ?」  大雅が打破。 「来た時にはすごい有り様だったんだけど、もう大丈夫なの?」  成海さんは大雅の問いに「うん……」と返事はするけど、言葉尻と表情が俺を気遣ってくれている。大雅がそれに気付くと、俺に疑問符を含ませた視線を送ってきた。 「ああ、俺は別で帰るから」 「は?」  ハテナの次は怒マーク。  それ以上は訊いてこないけど、話がちげーぞと顔で言ってくる。焦った俺は「違う違う」と、言葉を繋いだ。 「べ、別に距離取ろうとしているとか、そういうのじゃなくてだよっ。普通に。普通に友達としてそうしたいなってだけ。だって大雅、今日は色々話があるんだろ?」  大雅は目を丸くする。何か言いたげに口を開けて、でも何も言葉を発しないで不思議そうに俺を見た。 「なんだけど……少しだけ。少しだけ、俺に時間を貰えるかな?」  あのことを、ちゃんと二人に謝らないといけないから。
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