旅行のしおり

　修学旅行の少し前に、学年全員に配られた『旅行のしおり』。
　その中の『日程欄』には、どこへ行くのか、何分そこにいるのかなど、細かいな予定がびっしり書き込まれていた。
　でも、たまたま見せてもらった隣のクラスの友達のしおりには、二日目の予定がまったく記されていなかった。
　どうして空白なのか不思議だったけれど、何かの手違いで、印刷されなかった紙が紛れ込んだのだろうということで話は終わった。
　でも、修学旅行の二日目、その子のクラスの生徒を乗せたバスが事故に遭ったのだ。
　幸いにも、事故自体はたいしたものではなく、軽い怪我をした生徒が何人か出ただけで済んだが、事情聴取などでバスが動かせず、彼女達のクラスだけ、二日目の旅行どころではなくなった。
　その時に、二日目だけ空白だったしおりのことを思い出した。
　帰宅後しばにくして、友達に旅行のしおりを見せてもらおうと思ったけれど、いつの間にかどこかへ行ってしまったらしく、また、彼女のクラスの子達は、みんな知らぬ間にしおりを失くしていたとのことだった。
　もしかしたらあの空白は、彼女達のクラスだけ、旅行の予定が潰れることを示した物だったのではないか。
　その疑問はまだ頭の中にあるるけれど、それを確かめる術はない。

旅行のしおり…完