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中学時代は俺たちふたりは典型的ないじめられっこだった。
あんまり思い出したくはないが、当時は俺もテルモも背が低く身体も華奢だった。テルモはまるで体温計のようであり、俺は体育のたびに細すぎる脚をからかわれた。いつのまにか『バンビ』というあだ名がついた。
俺たちは仲間と言うよりは、傷をなめ合う同士と言った方が良い。当時クラスで幅を利かせていた飯田という巨漢が束ねるグループに虐げられ、カースト的には最下層にいた。
その飯田に会いに行く。先月唐突に掛かってきた電話でテルモにそう告げられた。
「中学時代に貸した金がある。元金27,850円だ。利息をつけて回収に行く」
よく俺の電話番号が分かったなと驚きつつ、内心メンドクセーとは思った。飯田なんて名前はとっくに忘れていたのだ。
「飯田は今、実家のシケた居酒屋を継いでいる。潰れる寸前の店だ。そこに冴えない連中を集めて同級会をやるらしい。乗り込んでいって金を回収する」
中学時代、俺たちは飯田からカツアゲされて大分金を取られた。テルモの奴は律義に取られた金額を記録していたようだ。そういえば卒業式の日に、テルモが手書きの借用書を持っていて、なんとか飯田に判を押させるのだみたいなことを震えながらつぶやいていた記憶がある。
「俺は行かネー」
「同級会にはミナコも来るぜ」
テルモの言葉に懐かしいミナコの顔がふと思い出された。ソバージュの髪と紺色のブレザーがよく似合う清純な笑顔。
「しゃあない行くか」と俺は気が変わった。
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