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「俺は前々からとっとと警察官なんか辞めて、自分の店を経営してみたかった。悪いが俺には繁盛させる自信も情熱もある。それに相棒のバンビは本職だ。人気店のノウハウを全部持っている。ふたりでやりゃあ、立て直しできらあ」
勝手に俺を使うな、と横で思いつつ、ああそうかだから俺を呼んだのかと思っていた。
「愛想が良くてヤル気満々の若いヤツも何人か引っ張ってこれる。ここは立地だけはいい。要はやりようさ。お前らにしても悪い話じゃねえと思うけどな」
肩を怒らせていた飯田が、ゆっくりとその肩を落とした。盃をコマのように回して虚ろな目をしていたが、ぼそりと呟く。
「余計な真似しやがって。この店はずっと客なんて来てねえんだ。だから今日の宴を最後に店を閉めるつもりでよ。どうせ最後ならぱーっと昔世話になった仲間と楽しく飲もうかってよ」
「知ってるよ、バーカ」
陽気に言い放つテルモを横目に、俺も騙されたなと苦笑した。こいつ、警察官をやりながらこの「いいだ屋」の常連だったってわけだ。
わー! 嬉しい。リョウちゃん悪い話じゃないわよ。とミナコが黄色い声を上げる。
「ババアは雇わねえよ」
きー! とミナコがまたハンカチを噛んだ。
(了)
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