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「そう。じゃあ返答を兼ねて私から皇太子殿下へご挨拶に伺ったほうがよろしいですわね?」
「いえ、返答はこのヨハンが。それにお嬢様がもしご挨拶をとお考えであってもそれは今ではありません。」
意外なことに執事のヨハンは首を横に振った。
「何?どういう事かしら?」
「皇太子殿下は恐らく今朝はお疲れでしょうから……」
「お疲れ?昨日の夜会で?」
「それがですね、夜会明けに殿下の使いの者から見目の良い女を夜伽にご所望との伝達がございまして、当家保有の女奴隷を2人ばかり派遣したのでございます。恐らく殿下は夜のお疲れが──」
「ち、ちょっと待って!」
ヨハンの説明を私は途中で遮った。
前言撤回。
貴族同士で色恋遊びをするならともかく女奴隷を?夜伽の相手にご所望ですって?
ルードヴィッヒ殿下を少しでも見直した私がバカだったかも……
そんな事より気になったのは我が家に奴隷が常駐してるって事だ。
確かに我が家には執事やメイド、シェフ、馭者や庭師、楽団員そして騎士や魔道士を含む大勢の警備兵達が常駐しているが、彼らにはちゃんと給料を払ってるはずだし、父上からも奴隷の存在なんか聞いた事がない。
「あの、当家には奴隷なんかいるの?」
「ああ、父君から聞いておりませんでしたか、これは失礼しました。」
私の質問を受けたヨハンはものすごく綺麗な姿勢で深々と私にお辞儀した。
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