第二皇子は転生者

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 「お嬢様の父君が昨年、エスターマルク領内の人頭税の未納者を一斉検挙したのです。彼らのうち財産のある者はそれを徴収して釈放し、ない者は奴隷となったのです。」  「ない者は……奴隷……」  それって、いくら未納者でも酷くない?  私の非難がましい目つきから何かを察したのか、執事のヨハンは長々と私に事情説明を始めた。  「いいですかお嬢様、我が領内には100万の領民がいます。この内人頭税を納めるのは15歳から55歳までのおよそ70万人。彼らの納める人頭税が、我が侯爵家の維持費となっているのです!」  人頭税を納めない者をそのまま放置すれば、やがて誰も人頭税を納めなくなるでしょう。さすれば侯爵家はどうなります?── 私を諭すように、ヨハンは一気にそうまくし立てた。  「で、でも侯爵家の維持費って、そんなにかかるの?」  前世で徴税官吏だったからか、私はお金の話が妙に気になった。  「当家には5000人の兵と3000人の召使いがおります。彼らの給料だけでもかなりの額になります。」  「そんなにいた!?」  予想以上の数に私は目を丸くする。  「兵も召使いも交代で勤務しておりますから一度に勢揃いはしませんし、何も彼らはこの城だけにいる訳ではありません。領内のあちこちでそれぞれの任務についているのです。」  なるほど。そりゃそうか。  「それから服飾品、交際費などもかかっております。例えばお嬢様が昨日お召しになっていた赤いベルベットのドレス。あれ1着の値段で普通の農民一家が2年は食べていけるでしょう。」  「うーん……」  そうだとしても、生活困窮者を奴隷にするってどうなの?  侯爵家の維持に半端じゃないお金がかかる、という話は分かったけれど、私は何だかもやもやした気持ちのままだった。
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