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「どうだい?航空戦艦の乗り心地は。素晴らしいだろう?」
翌朝── 私は皇太子殿下や侍女のジークリンデたちと一緒に風を切って空を飛ぶ航空戦艦の艦橋にいた。
私の領地エスターマルクははっきり言ってド田舎で、帝都サンフランツまではおよそ150マイルもある。叙勲の時に馬車で行ったけど、道中で3泊もしなけりゃならなかった。
「馬車だと早くて4日はかかる道のりだが、この船なら帝都までものの2時間で到着さ!」
綺麗な金髪をふぁさぁっ、とかきあげ、自慢げに殿下はそう仰った。
「ところで私がエスターマルク城へわざわざ視察に来た理由が分かるかい?」
「えーと……アルザス公領の視察を兼ねてる。とか。」
「鋭いねぇ。でも惜しい!」
殿下がいたずらっぽい表情になる。
エスターマルク領の西隣には肥沃な穀倉地帯のアルザス公領があり、そこは殿下の御領地ということになってる。
アルザス領の西側には隣国『ガリア王国』があり、この国はずっと昔からアルザス領をガリア王国固有の領土だと言い張ってるのだ。
「知ってのとおり、ガリア王国のヤツらはいつアルザス領に攻めて来るか分かったものじゃない。ヤツらの領土欲は際限がないから、そうなるとアルザスと隣接してる君の領地だって危ない。だから私がこうやって来たのは、君と君の領地を守るためでもあるんだよ?」
なーるほど。
つまりこの国を本気で守れる皇位継承者は自分しかいない、だから自分に清き一票を、というところかしら。
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