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「ようこそ、シェーンブルク宮殿へ。祝福の儀式以来だね。」
帝都へ着いたのは昼前で、その日の晩餐会までに私は王宮でハインリヒ様とお会いする事が出来た。
第二皇太子であるザクセン公ハインリヒ・フォン・ヴァイスブルク殿下は、お兄さんのルードヴィッヒ殿下と違って線が細く、そして大人しそうな印象の皇太子だった。
綺麗な金髪をした端正な顔立ちではあるのだが……えーと、こんな人いたっけ?と、しばらく考えなきゃならないほど印象が薄い。
明るく社交的で押しの強いお兄さんや、目を引くほどの美人で迷宮制覇者の称号を持つ妹『聖皇女』マリア様とは顔こそ似ていても全然雰囲気が違う。
もちろん周りに家来たちはいるのだが、主君がそこにいるのに他の用事を色々やっていて、ハインリヒ様は基本的には放って置かれている。
皇族だしザクセン公爵の称号も貰ってる割にどこか扱いがぞんざいな気がした。
「ああ、気にしなくていいよ。僕の扱いはいつもこんなモノだから。」
本人にも自覚があるのか、ちょっと苦笑いを浮かべてハインリヒ様はそう言った。
そー言えばこの人、私と同じで祝福の杖が光らなかったんだっけ……
「じゃあ僕の部屋へ行って2人きりで話そうか。」
ええっ!?2人きり?
ハインリヒ殿下は柔らかい笑みを湛えたままだ。
「えっと……あの……いきなり?」
「ああ大丈夫だよ。不埒な真似をするつもりはない。心配ならその武装侍女さんを部屋の入口に立たせとけばいい。」
うーん……確かに変な雰囲気はないし、そもそも皇太子殿下のお誘いを断るのも無礼な気はする。
よし、いざとなればジークリンデを頼ろう。
そう結論付け、私はハインリヒ殿下の部屋へとついて行くことにした。
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