きっかけは悪夢だった

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 「この新型甲冑(ベーオウルフ)は試験飛行では時速250マイルを記録したんだ。竜人族のヤツらが自分で飛べる最高速度が時速200マイルちょっとだから、これで我が軍は俄然有利になる。」  「あの……魔道士たちの装備は更新しないのですか?」  「ああ、それはいいんだよ。」  コレだから素人は──そう言いたげな表情をちょっとだけ見せ、皇太子殿下は騎士と魔道士の役割の違いを教えてくれた。  「いいかい?竜人族の戦士どもとドッグファイトをやるのは魔道士じゃなくて騎士だ。魔道士は敵の戦艦や城に急降下して攻撃魔法を叩き込むのが仕事だ。だから騎士たちの命を守るために甲冑の性能は大切なんだよ。」  戦艦やお城だって反撃してくるでしょうに、魔道士たちの命はどうでもいいのかな?──私はそう思ったけど、無駄に話が長くなるのでそれ以上は何も言わなかった。  「それより君にとっていい話があるんだ!よく当たると評判の占い師がいて、今日連れて来たんだ。」  晩餐会で紹介するから楽しみにしていてくれたまえ──そう言って皇太子殿下はウインクをしてきた。 ────  晩餐会の場で皇太子殿下に紹介されたのは、長い黒髪を同じく長いべールで覆った年齢不詳の女性占い師だった。  「彼女は帝国北西部にある島国、ヴィンラント王国の占い師でね、祝福の儀式の時に君に与えられた魔法がどんなモノか分かるというんだ。」  あの時は君も辛かっただろうから、僕が気を利かせてあげたのだよ──ものすごく無神経なことを爽やかに言って、皇太子殿下はダンスのお相手を今か今かと待ちこがれている令嬢たちの人だかりへ消えていった。
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