第二皇子は転生者

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第二皇子は転生者

 「いいか花村、消費税ってのは顧客から預かってる金だ。経営者のポケットマネーじゃネーんだよ!」  ハイ、確かに。お説ごもっともです。反論しようもございません──  上司である統括徴収官のド正論を、あたしは俯いたまま黙って聞いていた。  あたしがこれから差し押さえに行く町工場はコロナ禍もあって飲食店関係の設備投資案件が激減し、2年前からの消費税およそ500万円を滞納していた。  どうしてそんな事になったのか、あたしも、そして上司ももちろん知ってる。  仕事が激減したのに社員さんに給料払わなきゃならなかったからだ。  コロナもおさまり、ようやく仕事が少しずつ戻り始めてはいたが、その時にはもうコロナ融資も消費税の納税資金もとっくに使い切ってしまっていた。  そんな事情を考慮して、あたしは上司に納税猶予を打診してみたが、返ってきたのは冷酷非情なド正論──冒頭のセリフだったのだ。  「そもそも納税猶予は向こうから申請出すものであってこっちからしてあげるモンじゃない。知ってんだろ?」 「ハイ……」  あの社長さんが納税猶予の申請手続きなんか知ってるとは思えないけど…… 「いいか花村、俺たちは公務員だ。租税法律主義だよ税務大学校で習ったろ?法律どおり適正に徴収するのが俺たちの仕事なんだ。そこに私情を挟むな。」  税金滞納するようなダメ企業はいっその事潰れたらいいんだよ潰れたら── 統括徴収官は吐き捨てるようにそう言った。
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