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「お嬢様、朝ですよ……」
「うーん、ああ、おはようジークリンデ。」
クイーンサイズの天蓋付きベッドで私はいつものように軽く伸びをして、半身を起こす。
少し耳の尖った半妖精の侍女が私の傍らでタオルを持って立っていた。
なるほど、私の前世はどうやら税金を取り立てる官吏だったらしい。
占い師の話を聞いたからか、あるいは夢の内容が一昨日よりはマイルドだったからか、昨日に比べて随分冷静な気持ちで私は夢を分析した。
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「お嬢様、昨日皇太子殿下からお話がございまして。」
「ああ、パーティの後殿下とお話ししたのね?」
朝食のテーブルで、私は執事のヨハンから殿下の今後のご予定を聞かされた。
「何でも、公平を期すためにもお嬢様には自分の弟や妹に個別に会っていただきたい。ついては、明日出立する航空戦艦にご同乗願いたい。とのことです。」
「へぇ、そうなの。」
同じ皇位継承権を争う弟や妹に個別に会って欲しいなんて……あのナルシスト皇太子殿下にしては殊勝な心がけね。
私は少しだけ感心した。
神聖ハドリア帝国では、皇位を長男が継ぐとは限らない。
オストマルク、ルーヴェン、ブラッケンブルク、ラインツ、ファルケンシュタインそしてエスターマルクの6人の選帝侯とハドリア正教会が選任した3人の枢機卿が、選挙によって次の皇帝を選ぶことになっている。
つまり皇太子殿下から見れば私は貴重な1票を持っている9人の内の1人なわけで、少なくとも即位するまではそうそう邪険には出来ない存在だった。
それだけに、自分のライバルに1対1で会っていい。なんて、なかなか言えることじゃない。
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