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「アウト……」
打ちのめされたような感じで項垂れそうになる。
「はい。だから、私すっごい嬉しかったんです今日」
え? 僕は顔を上げて華やかな笑顔を見せるヒトミを見つめた。
「お姉ちゃんはめちゃめちゃモテるんですけど、結婚願望がゼロなんです。だから真面目に本気で来そうな男性は全部振って、気軽に遊べる男の人ばかり選んじゃう。相手が本気かどうかが経験で分かるんですって」
「そ、そうなんだ」
「だから私、全部お姉ちゃんのアドバイスの逆の人を選ぼうって」
ん!!
「いろいろ言ってすみません。私本気です。ミナガワさん、今後も私とお付き合いして頂けませんか」
一発逆転。僕は思わず彼女を抱き寄せそうになる。
「ありがとう。嬉しいよ。こちらこそどうぞよろしく」
ヒトミも目を細めて両手を差し出してきた。僕らは手を合わせた。
「それにしても、ちょっと冷や冷やした。僕はもうてっきりダメかと」
ごめんなさい、とヒトミはぺろっと舌を出す。
「ひとつだけお姉ちゃんのアドバイスで参考になることがあって。大衆食堂で男の人は値踏みするみたいに全部見てくるから気をつけなさいって。昔そういう人がいたんだって。本当にそうで可笑しかった。だからちょっと悔しくて、意地悪しちゃった!」
そんなヒトミの表情がキュートで、僕の選択は間違っていなかったと確信した。
(了)
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