おつきあいの条件は

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 ヒトミはとてもはしゃいで、あれも食べたいこれも食べたいと親し気に僕の腕をつかんだ。これまでいつも僕が奢っていて申し訳なさそうにしていたが、今日は自分の分は自分の財布で支払う。それが嬉しそうにも見えた。  彼女が選んだのは、ごはん(小)、あさりの味噌汁、白菜漬け、鯖の味噌煮、トマトサラダ(小)。そして「だし巻き卵は半分コしましょ」と言ってふたりでシェアした。完璧だった。チョイスが僕の理想通りである。  兄貴が冗談ぽく言っていた、白飯にヨーグルトというようなそんなぶっとんだチョイスでもなく、栄養バランスだとか見た感じのセンスとか、ああちゃんと育ってきた子なんだなと僕はひとり感動した。 「メニューだけ良くてもダメだからな。食べ方も大事だぞ。とんでもない調味料をかけてたり、先に味噌汁一気飲みしてたり、デザートで飯食ってたり、そういうのもアウトだ」  そんなアドバイスについてもヒトミは完璧だった。頂きますと手を合わせてから「よーし」と言って味噌汁にちょっと口をつけて、ご飯、おかず、味噌汁とバランスよく「三角食べ」をする。きれいに平らげて「おいしかったあ」とまた手を合わせてご馳走様をする。箸の扱いも正しくきれいな所作だった。僕が望むような好きな食べっぷりで、2倍おいしくご飯を食べた気がした。もう悩むことはない。ヒトミに猛アタックだ!
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