おつきあいの条件は

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 結婚を前提に付き合いたいと思う女性ができた。  僕は夢中になっていた。年齢的にも、そろそろ真剣に生涯の伴侶を見つけたい。そんな思いにぴったりの女性だった。  ヒトミという同じ会社の後輩。気立てが良くて笑顔が華やかで話す内容も知的。メロメロだった。  何回かの食事デートの末、正式に付き合ってほしいと告白するシチュエーションを思案した僕は、いつものように兄貴に相談した。イケメンで鳴らした3つ上の兄貴は昨年素敵な彼女とゴールインしていた。女の子とのデートが苦手な僕は、いつもそんな先輩でもある兄貴のアドバイスに従っていたのだ。 「そうか、いいぞ。ところでデートは順調にきたんだね」  兄貴は爽やかに僕の肩を叩きながらよくぞ聞いてくれたという顔をする。 「食事を3回。兄貴に教えてもらった通り、初デートは青山のイタリアン。2回目が渋谷のダイニングバー。それでこの間は赤坂のホテルのレストランで、結構いい感じに来てる」 「よし。じゃあ次の店でキメようぜ。とっておきを紹介する」  まるで自分のことのように、兄貴は満面の笑みで身を乗り出してくる。 「お前は俺にそっくりだから女の子にもてる。顔はアイドル並だし、頭もいい。スポーツ万能でしかも性格が超やさしいときてる。だけどオクテだから心配してたのだ。俺がしっかりレクチャーしてやるからな」  そうして兄貴はお薦めの店を教えてくれた。店名を聞いて少し意外で驚いたけれど、絶対大丈夫だと兄貴は太鼓判を押す。 「この流れでうまくいかなかった女性は、数ある中でたった1人いたくらいだよ。絶対大丈夫、ウチの奥さんもここが決め手になったんだからね」  プレイボーイよろしく自信満々にそう言った。  そして、次の週末にヒトミをデートに誘って連れて行ったのだった。
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