150人が本棚に入れています
本棚に追加
ガヤガヤと騒がしい教室内、生徒たちはホームルームが終わるや否や待ってましたと言わんばかりに立ち上がり始めた。彼らは学校という名の拘束された空間から解放されたことによる喜びや、これから始まる部活動への不満など様々な声を上げている。
しかし、そんな会話など悠哉にとってはどうでもいい事だった。聞きたくもない会話が嫌でも耳に入り、「はぁ…」と悠哉の口からはイラつきからついため息が漏れ出た。
そんな騒がしい空間の中から「悠哉!」とはっきりと自分の名前を呼ぶ、男にしては少し高い聞き馴染みのある声が聞こえてくる。声の主、柚井陽翔はいつものように人好きな笑顔を浮かべ、窓際に配置されている悠哉の席へと歩みを寄せた。
「帰ろっか」
「・・・あ、ああ」
「どうしたの?」
陽翔の顔を見た途端、つい言葉に詰まってしまう。悠哉の異変に敏感な陽翔はすぐに疑問に思ったようだが、悠哉は何事もなかったように「なんでもない」と立ち上がり帰り支度を始めた。
「まぁ悠哉ってたまにボーっとしてるもんね」
「うるせー」
陽翔の姿をなるべく視界に入れたくなかったために、自分の気持ちとは裏腹に平然を装い悠哉は教室を出た。
――こいつの顔を見ると嫌でも気分が下がる。
男である彼、涼井悠哉は同性の親友である柚井陽翔に対して友情以上の感情を抱いてしまっている。そんな悠哉の恋は陽翔に恋人ができたことによって失恋へと変わってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!