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7.本心
あとから聞いた話だが、悠哉を襲おうとした男三人は彰人と難波の証言、そして難波が録音したものが証拠となり退学が決まったようだ。彰人が殴った男はかなりの重症だったらしいが、悠哉を守るために取った行動だった為彰人自身に大きな罰が与えられることはなく、担任からのやり過ぎだというお叱りだけですんだらしい。
そして、あの日から悠哉は彰人と一度も会えていない。登下校だって部活が落ち着いたからと言って陽翔と共にしている。陽翔に何故彰人がいないのか聞いたところ、三年生は進路で色々忙しいという曖昧な答えが返ってきた。
休み時間や放課後に彰人の教室に行っても彰人の姿は見えない。完全に避けられている。やはり幻滅されたのだろうか、あの時の取り乱した自分の姿を見て関わりたくないと思われてしまったのだろうか。考えれば考えるほど胸が苦しく切なくなる。彰人に嫌われた、その事実が悠哉の心を深く突き刺してくる。
「悠哉…大丈夫…?」
「これが大丈夫そうに見えるか?」
机に突っ伏し、魂が抜けた抜け殻のような悠哉を心配し、陽翔が声をかけてきた。しかしそんな陽翔の気遣いも虚しく悠哉の気持ちは一切晴れることは無かった。
「彰人が進路で忙しいとか嘘だろ」
「えっ…!?」
顔を上げ、ギロリと陽翔を睨みつけるとあたふたとした様子で陽翔は動揺し始める。そんな陽翔に溜息をつき「下手な嘘つくぐらいなら最初からつくなよな…」と悠哉は呆れた。
「ごめん…でも僕も彰人さんがなんで悠哉のこと避けてるのかよく分からないし、一方的にお願いされただけだからあんまり納得いってないんだよね」
「俺ちょっと探してくる」
カバンも持たずに立ち上がり、ガララッと勢いよく扉を開け悠哉は教室を出る。「えっ!?ちょっと悠哉!?」と陽翔の驚いたような声が聞こえたが、気にせず足を進めた。
何も言わずに避けられて、納得がいかなかった。俺のことが嫌いになったなら陽翔に頼むなど回りくどいことをせず直接言ってこいよ、と悠哉は思う。あんなに自分のことが好きだと言っていたのに、急に姿も見せなくなるなんてあんまりではないか、だんだんと彰人に対して腹が立ってきた。
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