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教室へ入ると、いつもよりもガヤガヤと騒がしく悠哉は違和感を覚えた。不審に思いつつも席につき荷物を置くと「マジで!?」「マジマジ、やばいよな」と何やら興奮気味で話している男子の会話が耳に入る。
「何かあったのか?」
「なんかみんなザワザワしてるね」
クラスメイトの様子に陽翔も不審がっているようで、なんだか落ち着かない様子だ。
「おーいお前ら席につけー」と担任が入ってくると「やべっもう時間かよ」と先程まで騒がしかった教室内が少しずつ静かになっていく。いつものようにHRが終わると担任が「今日の一時間目は文化祭の出し物決めるからお前ら始まる前に考えとけよ」とみんなに声をかける。するとクラスメイトの一人が「先生!文化祭に那生が来るって本当ですか!」と勢いよく手を挙げた。
「なんだ、もう広まってるのか」
「マジかよ!」「やっぱり噂は本当だったんだ!!」と担任の一言でクラス中は大騒ぎになる。担任は出席簿を片手に「ははは、お前らちゃんと出し物考えとよ」と騒ぎ立てる教室を後にした。
「悠哉聞いた!?あの那生が来るんだって!!」
前の席の陽翔はくるりと振り返り、キラキラとした瞳で悠哉を見た。そんな陽翔とは対照的に悠哉は冷めきった態度で口を開いた。
「那生って誰だ?」
「えっ…?」
目を丸くした陽翔はしばらくの沈黙の後「悠哉那生のこと知らないの!!?」と悠哉の耳をつんざくほどのバカでかい声をあげた。
「うっせーな!!」
「あっごめん…、でも悠哉の声の方が大き…」
「は?」
「なんでもないです…」
陽翔をひと睨みした悠哉は「で、那生って誰なんだよ」と指で机をトントンと叩いた。
「今大人気の男性のモデルさんだよ、雑誌や企業広告はもちろん最近テレビにもよく出てるから知名度もすごい上がってるみたい」
「お前芸能人とか詳しくないのによく知ってるな」
「僕でも知ってるぐらい有名ってことだよ。だから流石の悠哉でも知ってると思ったんだけど…」
「知らなくて悪かったな」
誰でも知ってるのが当たり前のような言い方をされ、不機嫌な態度が露骨に出る。野球の試合中継ぐらいでしかテレビを見ない悠哉にとって今人気の芸能人、ましてやモデルの事など知るわけが無かった。
「でもなんで那生がうちの学校に来るんだろ?」
「さぁな」
那生のことなど、悠哉にとっては微塵も興味がなかった。その為どんな男なのか調べることもせずに、そのまま机に突っ伏しスマホをぼーっと眺めていた。
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