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1.再開
「来んな…っ!」
放課後の教室に、一人の男子生徒の声が響き渡った。男子生徒は目の前にいる男の胸を思い切り押すと、怯えた瞳で震えている自分の手を見つめた。
「悠哉…?」
悠哉と呼ばれた男子生徒はハッと我に返ると、自分が男に対してやってしまった過ちをまじまじと身体で実感し、恐怖心から急いで教室から飛び出した。
「悠哉!?」
男が自分の名前を呼んでいる。しかし悠哉は引き返すことなく走り続けた。
これは悠哉にとっての忘れてしまいたい記憶の一部だった。人間誰にでも忘れたい記憶というものが存在する。しかし、そんな記憶に限ってなかなか忘れられず、自分の中に住み着いて消えようとはしない。
悠哉の中にも同様に、あの日の出来事が後悔という記憶として、永遠に悠哉の中に渦を巻いている。二度と会うことがないであろうあの男の顔が、悠哉は忘れることが出来なかった。
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