12、赤い手紙

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12、赤い手紙

「龍の島国」の神界の国は高天原だけではない。 人間の世界を見守っている高天原は役割が明確である。以前は「龍の島国」に係る神の国が60ほどあった。 だいぶ前になるが、大規模な極東の神界の改革があった。それによって国の数は60余りから30になった。 東の神界の編成替え、「廃国」があったのだ。 当時、高天原の役人たちは、ある日突然現れた数十万の移民に腰を抜かした。 そこで我がしていた隠蔽行為が発覚した。 何度も言うが我は読み書きができない。その「赤い手紙」は送り付けられた相手にしか開封できない様になっていた。 神力でガッツリ封をされていた。モロ、我に宛てたものだ。その「赤い手紙」は有無を言わさない「威圧の気」を発していた。 当時の我は、「龍の島国」に関わっているのは「高天原だけ」だと思い込んでいた。我だけではない。あのイチキでさえ、同じ認識だった。 突然現れた移民は、廃国で国を亡くした民草の柱だった。赤い手紙に「廃国」の経緯と「移民の受け入れの依頼…ほぼ命令」が書いてあったのだ。 それは時間をかけて何通も何十通も何百通も我に宛てて送られていた。 我は、そんな重要な手紙だとは思わなかったのだ。ただ「赤いだけのクレーム手紙」だと思っていた。申し訳ない。当時は我も子供だったのだ。 我は、その赤い手紙を王の間の隠し部屋に放り込んでスルーした。スルーして忘れることに専念した。 数十万の移民が現れた時に穂月に隠蔽がバレた。3畳の隠し部屋に「赤い手紙」が山のように未開封で置かれていた。 我の部下達は、この出来事によって「女王は相当なバカ」だと認識した。 それからは、蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。 我の部下達は、自己アピを実務でもする。各部、一斉に自分の役割を発揮した。 溜まりに溜まった赤い手紙を、我が開封した手紙を、時系列で精査、直ちに移民の処遇とその手順をを部下達で話し合い、我に奏上した。 我は、皆に助けられていた。この出来事で我も少しは大人になったと思う。 「龍の島国」の神界は、たくさんの国、たくさんの柱が関わって成り立っていた。 高天原は、「龍の島国」の人間を直接、見守る。他の国々は「森羅万象」と言われる世界を構成する役割の国だった。 各々の国の受け持ちは違う。 赤い手紙の送り主は、極東の神界の国々を取りまとめる役割を持つ国の王だった。名前はセキ。 わかりやすく言えば、極東の神界の「組長」だ。かなり乱暴にやる時はやる。そんな王だ。 高天原が、ある意味「野放し」だったのは、他国とは全く役割が違い、「龍の島国」に近く、神界においては辺境に位置することで高天原がセキから見守られ、目溢しされていたのだ。 セキと我は会ったことがない。向こうは我のことを全部知っているようだ。 我がやらかした事の全部。彼奴(あやつ)のことも知っておった。 セキの国は「赤界」と呼ばれている。国ではないのだ。ある意味概念だ。国民である柱たちは全員が公務員。民はいないと聞く。場所も分からない。「赤い気」にしか見えない。謎の国である。 恐らく、姿を晒さないことで更に圧を加えているのだ。現に赤い手紙を見ると我は胸が苦しくなる。怒られているような気分になる。 桃花の側仕え亜遊は、その廃国移民の1柱だ。どこから来たのか覚えていないと言う。 覚えているかいないかは別として、亜遊は、その所作や話ぶりで相当身分が高いと我は踏んでいた。亜遊と桃花は大草原で出会った。桃花が亜遊の手を引いて「お友達になったの。」と言って王宮に連れてきた。 亜遊もその時は子供だった。10年もしないうちに大人になってしまったが、「側仕え」として桃花の側に置いた。それが桃花の願いだったから叶えた。我が娘にしてあげられることは、そのくらいしかないのだ。 人間住む「龍の島国」。柱たちが在る「高天原」。 距離は近い。そして、人間と在る者(神)は、元々同じなのである。 ただの『気』。 量子の世界での大きさと存在の概念が違うだけだ。それは、次元が違うということだ。
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