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「小さい頃は恋ってどうしてたの。赤ちゃんのときとか」 「そりゃ親からもらってたよ」 「家族愛はカウントされないんじゃなかったっけ」 「親もはじめは子供に恋するものだからね」  今日も僕たちはノートパソコンとホットドッグ、紅茶とココアの乗った四角いテーブルを挟んでいる。  喫茶店のマスターにも「いつもの?」「いつもので」と言えば通じるようになっていた。  僕が通っていた頃はそんなことなかったので、やはり彼女の影響なのだろう。美少女は記憶に残りやすい。 「特にお父さんがね、私にたくさん恋をくれたからここまで大きくなりました」 「最近はもらえないの?」 「愛に変わっちゃったからね。小学生くらいからかな。お父さんの恋、結構おいしかったから残念」 「人によって味も違うんだ」 「そりゃ作る人が違うからね。ホットドッグとおんなじ」  なるほど、と頷いて僕はホットドッグを齧った。確かに僕は特段ホットドッグが好きというわけではないが、この店のホットドッグは美味しいと感じる。  恋は食べられて、愛は食べられない。  恋が腐ったら愛になるんだよ、と恋花は前に言っていた。恋と愛の境目を見ることができるのはなかなか面白そうだと思う。 「てことは小学生の頃から男を食べ漁ってたのか」 「漁ってはないけど」  まあそうなるね、と彼女は紅茶を口に運ぶ。  僕が小学生の頃にもかわいいクラスメイトはいたけれど、恋なんて意識したこともなかった。そんな時期から恋人を捕まえなきゃいけないなんて大変だ。  まあ僕に至っては今もそうだけど。
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