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 恋花を見つけた日のことを思い出す。  僕が行き倒れていた彼女に声をかけたのは、単に見て見ぬフリをして立ち去るのが後ろめたかっただけ。 「助けてみたら超絶美少女だったから付き合ったんだ」 「正直すぎて清々しいね」 「恋を食べるキャラも強すぎて小説に使える気がした」 「正直なのは良いことばっかじゃないよ?」  彼女は眉をひそめた。僕は薄く笑みを浮かべる。  この恋は後ろめたさで始まって、打算で続けてきただけに過ぎない。吹いたら飛んでいってしまいそうなほど薄っぺらい気持ちだ。 「でも書けそうな気がしたんだ」  なんで恋愛小説書いてるの。  以前訊かれた彼女の問いに僕はようやく答えられた。  ──書けそうだったから。  彼女と出会った瞬間の、あの胸の高鳴りを言葉にすればきっといい作品になると思ったからだ。 「だからこれは善意じゃない。君のためなんて1ミリも考えてない」 「彼氏のセリフとは思えないね」 「けど楽しかったんだよ」  デートのような部活のような時間を僕は気に入っていた。  毎日頼んでも飽きないくらいには、彼女との日々を楽しんでいた。  確かにずっと同じ毎日なんてありえないんだろう。いつものメニューもいつかは終わる。  でも僕は恋愛初心者だから、どうにかこうにか足掻きたくなるんだよ。  この想いは善意どころか偽善ですらない。  もっと利己的で、わがままで、自分勝手な。 「これは自分のための気持ちなんだと思う」  この気持ちがいつか無くなると知って。  それでも無くなってほしくないと思うのは、恋にはならないかな。 「僕は君が好きだよ」
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