雪の思い出

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「あら〜」 「あれ〜」 「あ〜らら〜」 「私、落ちてるわ」 「僕も、落ちてる」 「いい気分じゃ」 「あなた綺麗な六角形」 「君は輝いてるよ。キラキラ。雪だね」 「そうじゃ、雪じゃ。だから落ちとる」 「なら、もうすぐ消えるわね」 「そうだね。消えるね」 「まあ、そういうことじゃな」 「街ね」 「そうだねいろんな家が見えて来た」 「あそこには小学校があってな。あっちに団地の建物がある」 「向こうに山があるわ。半分白くなってる」 「反対側には海があるね。霞んでるけど」 「いい景色じゃ。わしはこの街が好きじゃ」 「私、なんだかここに落ちたかった気がする」 「僕は何だか懐かしい」 「雪の思い出じゃ。雪の思い出」 「何か思い出しそうで……」 「思い出せない」 「でも、感じるじゃろ」 「そうね」 「そうだね」 「そうじゃ。ありのままじゃ。レット イット ビイじゃ。いや、レット イット ゴウか?。ま、一曲歌ってしんぜようかね」 「ひゅーと風が吹いて来たわ」 「僕らの気持ちを察したんだね」 「あれ〜、寒い〜、そして流されてくぞーーー」 「もうすぐ落ちるわ」 「最後ぐらい、雪らしくありたいな」 「雪らしくとは?」 「……しんしん」 「……しんしん」 「そうなの? それが雪らしいの?」 「しんしん」 「しんしん」 「……しーんしん。しーんしん」 「つくね」 「つくよ」 「ついた」 「短い間だったけど、あなたたちと話せてよかったわ」 「何もたいした話はしてないけどね」 「そう言うな。雰囲気が大事なんじゃ。ムードとも言う。さあ、溶けるか。今生の別れじゃ」 「それじゃ」 「バイバイ」 「何じゃ、そっけないのう。もっと別れを惜しまぬか。最近のゆきんこ達は」  静かに冷たい風が吹いた。    ○
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