キレイナモノニハ

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ブランドものの黒のタイトワンピースを着こなし、ダイアモンドのジュエリーをまとう。どこからみてもセレブだろう。コツコツとヒールの音を響かせながら進む。そんな私は今日も行きつけの質屋へ入る。そこへ行くときは決まって質屋の店主と世間話をするのだ。 「いらっしゃいませ、今日は何を買い取りましょうか?」 「腕時計を数本、お願いします。」 私が差し出したのは高級腕時計と言われるもの。何でも欲しいものを手に入れられる私には値段の相場はよく分からないけれど。 「これまたいい時計ですねぇ。そういえばお客さん、最近どうです?」 「今日、この店までの道で恐ろしいことがありましたの。」 「というと?」 「ひったくりなるものにあいましたわ。この店までの道に一カ所昼間でも薄暗い道がありますでしょう。そこで鞄を力強く引っ張られましたの。私こう見えて実は空手の黒帯でして、咄嗟に回し蹴りをくらわしてしまいましたわ。それで、犯人がよろけたところで言ってやりましたの。『私からものを盗ろうなんて100年早いわ。このまま鞄から手を離すならばサツには言わない。ほら、奪えるものなら奪いなさい。』って。そのまま笑みを浮かべたら腰を抜かして去って行きました。本当にびっくりしましたわ、ひったくりなんてこの世に存在しますのね。」 「それは恐ろしい。最近は犯罪者も多いですから。あの有名なセレブ芸能人の家にも強盗が入ったとか聞きましたしねぇ。」 そう言ってニヤリと口のはしを上げ、店主さんは買い取り金の札束を私に手渡す。 「どうもありがとう。」 「ありがとうございました。ぜひ、またご利用ください。」 受け取った札束を鞄に入れながら思う、あの腕時計ってけっこうお金になるのね。 まあ、あのセレブ芸能人の自宅から 『盗ってきた』ものだし当然かしら…。
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