2. 不思議な中華食堂

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2. 不思議な中華食堂

 初めまして。いつも楽しく聴かせていただいています。今日は僕が大学生の夏に体験した不思議な話を紹介します。  当時僕は大学3年、就職活動の真っ最中でした。不採用続きで焦っていた僕は、東京下町のアパートの部屋で夜中まで履歴書を書いていました。途中お腹が鳴り時計を見たら深夜の2時。こってりした中華料理が食べたい、でもこんな深夜にやっている店なんてないだろうなぁ。結局コンビニに行くことにして、部屋着で外に出ました。  いつも明るい駅前通りを通るのに、その夜は何を思ったか普段使わない裏通りに入りました。シャッターの閉められた店や今にも崩れそうな古いビルが並んでいる、静かで不気味な路地でした。  怖くなって足早に歩いていたら、一軒だけ燈の灯る店を見つけました。『ラーメン』の赤い暖簾の上に『中華食堂狐狸(フーリー)』と書かれた煤けた看板が掲げられています。こんな遅い時間にやっている店があるんだと感激しながら、僕は引き戸を開けて中に入りました。  
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