7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「気を付けてね。今日はナイトが送ってくれるだろうから大丈夫だと思うけど」
レイさんがお茶目に見送ってくれる。
「謹んでお供いたします」
冗談に乗って、先輩は恭しく私に礼をした。
「橋本さん、自分と方向違うでしょう」
「駅までは一緒だろ?」
「もちろん、ナイトが猛獣になるのは許さないから」
「後輩は命をかけても守りますよ」
やはり、なぜか、けん制しているように見える。この数十分間見ていたところ、お互いに敵対しているというより、レイさんが橋本さんを警戒しているような様子だった。
じゃあよいお年を、とレイさんに伝えて、私と橋本さんは夜の街に出る。
「……橋本さん、私が店に入るのを見て入ってきたでしょう」
店から少し歩いた後、私は先輩を見上げた。
「ん?何でそう思ったんだ」
さして驚く様子もなく、先輩は質問を返してくる。
「タイミング的に、というか、時間差がそれくらいだったので。こんな色街の中だから心配してついてきたのかと」
思ったことをそのまま答えれば、「ご名答」と両手を挙げて、降参、という姿勢をした。この街は、昼は平和な商店街だが、夜になるとスナックやバーやそれよりいかがわしい店が多く立ち並ぶ。この辺りの地域では、有名な繁華街だ。
最初のコメントを投稿しよう!