1. バーの出会い

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 「気を付けてね。今日はナイトが送ってくれるだろうから大丈夫だと思うけど」 レイさんがお茶目に見送ってくれる。  「謹んでお供いたします」 冗談に乗って、先輩は恭しく私に礼をした。  「橋本さん、自分と方向違うでしょう」 「駅までは一緒だろ?」 「もちろん、ナイトが猛獣になるのは許さないから」 「後輩は命をかけても守りますよ」 やはり、なぜか、けん制しているように見える。この数十分間見ていたところ、お互いに敵対しているというより、レイさんが橋本さんを警戒しているような様子だった。  じゃあよいお年を、とレイさんに伝えて、私と橋本さんは夜の街に出る。  「……橋本さん、私が店に入るのを見て入ってきたでしょう」 店から少し歩いた後、私は先輩を見上げた。 「ん?何でそう思ったんだ」 さして驚く様子もなく、先輩は質問を返してくる。  「タイミング的に、というか、時間差がそれくらいだったので。こんな色街の中だから心配してついてきたのかと」  思ったことをそのまま答えれば、「ご名答」と両手を挙げて、降参、という姿勢をした。この街は、昼は平和な商店街だが、夜になるとスナックやバーやそれよりいかがわしい店が多く立ち並ぶ。この辺りの地域では、有名な繁華街だ。
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