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 本日も、大食い選手権並みの昼食に溺れる。佐野さんを脳内で眺めていると、声が外から入ってきた。  食堂にやって来た社員が、何やら審議中らしい。外とか食べるとかなんとか言っている。 『今日めっちゃ天気じゃん、だからやっぱ外の方が気分上がらない?』『この間言ってたカフェとか? 行きたいけど迷うなー』  会話内容に誘導され、窓の外を見る。ピカピカポカポカの晴れで、確かに絶好の日光浴日和だ。  思えば、食費の関係で昼に外食はあまりない。けれど、時には日を浴びての飲食も魅力的だよな。  外で食べるなら、そうだなぁ。    ――かーるく考えた結果、デザートのプリン三個を手に屋上へ向かう。未知の空間への移動は、行程だけで心が踊った。  扉を開けると、日光が優しく歓迎してくれた。屋上は人気スポットではないのか、ほとんど人はいない。  けれど、希少な数の中に佐野さんがいた。柵を相手に、角でひっそり食事している。 「佐野さん、こんにちは! いつもここで食べてたの?」  後ろからひょっこり顔を出すと、佐野さんの瞳がいつもより少し丸みを増した。かと思いきや、斜め下へと反らされる。  咀嚼中を狙ってしまったらしい。佐野さんは唇に指先を宛て、もぐもぐと口を動かしはじめた。  なんかリスみたいでかわいいな、なんて思っていると、もぐもぐを終えた佐野さんが頷いた。 「はい、そうです」 「俺も今日、天気がいいから風を浴びながら食べようと思って!」 「そうなんですか」 「せっかくだし隣で食べていい?」  まさか、こんな形で六回目のお誘いをするとはなぁ。でも、自然な流れだし!  肯定が想像の中で描かれ、座りかける。 「……それはちょっと」  しかし、連敗記録はあっさり更新された。 「ごめん、分かった! あっち側で食べるね!」
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