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 けれどやっぱり、屋上以降も食事を共にすることはなかった。誘いはただのワンシーンと言わんばかりに、佐野さんの様子にも変化はない。  相変わらずお菓子はくれるし、仕事を支えてもくれる。幸せなくらいにいつも通りだ。  あまりに変化が無さすぎて、俺の中、はっきりとした結論までできてしまった。あと、一つの可能性も。    戦友として貴方と共に戦いはするけど、恋愛的には砂粒ほどの好意もないですよ――ってことでしょう、きっと。  関係性にしっくりきすぎて、濃厚どころかピンポイントの答えを出したと思っている。  それと、お菓子くれるのは餌付け的な感覚なのかもしれないな、と。  こちらは勝手なる想像だが、どちらにせよ大きすぎる片想いであることに変わりはない。   「食べます?」  とびきり甘いパンを齧っていると、視界の端から手が侵入してきた。手のひらにチョコクッキーの箱が乗っている。 「いただきます! 嬉しー!」  脈なしは悲しいものの、揺るがない優しさにはやはり喜んでしまう。むしろ相変わらず魅力的で、好きの気持ちを圧縮できなくなる。  今の関係が、俺たちの最大値なのかもしれないな。  宿った答えは不思議と腑に落ちた。  諦めよう! 好きな人と相棒級の距離で仕事をして、楽しく雑談もできて、美味しいものだってくれる。それで十分に幸せなのだから!  だから、今以上の進展は諦める! 決めた!  ――はずだったんだけども。
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