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「佐野さん、このあと食事でもどう!?」 「すみません、お断りします」 「だよね! 分かりました!」  夕方、五時半。終業後のエレベーターにて、俺は五連敗目を迎えた。静まった空気に、敗北のゴングが――空っぽの腹の音が響く。  人前で訴えられるのには慣れていたが、佐野さんの前でだけは恥ずかしい気持ちを思い出してしまう。特に何も思われていないと、知ってはいるけど。それはそれ、これはこれ。 「食べます?」  真横から、スマートに差し出されたのは飴だ。くだものアソートと書かれた袋ごと差し出されている。  未開封なのはいつものことだ。最初は『くれすぎじゃない?』と戸惑ったが、慣れたものである。 「嬉しい! ありがとう!」  丸ごと受けとり、いちごミルクを選んで口に入れた。まったりとした甘さが、腹を慰めてゆく。  俺の恋路も、このくらい甘かったら良かったのに。なんて。    俺は、クールで優しい佐野さんが好きだ。
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