四季と景色

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「ばぁちゃん、色んな花に囲まれてとてもキレイだよ。やっぱりばあちゃんには花が似合う。楽しい方がいいと思ってカラフルにしてもらったんだけど見える? ばあちゃん……」 「きっとニコニコ見てるよ。それよりこの絵、本当に一緒に入れちゃっていいの? せっかくキレイだし、写真と一緒に飾ることもできるよ?」 「うん、いい、僕がこうしたいんだ。全部ばあちゃんのために描いたから、ばあちゃんに持っていって欲しい。ちょっと、天国で自慢できるような出来じゃないのが残念ではあるけどね……」 「何言ってんの。一生懸命描いてたものだし、自慢しっぱなしだと思うけどね。いい孫持って、お母さんも幸せねぇ。部屋の中で季節を楽しめるように、大きな絵を描こうなんて子なかなかいないよ? 向こうでこの子ごといっぱい自慢してやってよ」 「もう、母さん。そんなこと言うとばあちゃん困っちゃうよ」 「――そろそろ出棺のお時間でございます。お別れの挨拶がございましたら――」 「……ねぇ、ばあちゃん。もうすぐ桜が咲くよ。そうしたら、皆で一緒に花見に行こうね」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!