花祭り

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 そして2日後。  純白のドレスを纏った美しい女が、そっと目を覚ました。  その頭上には『五分咲き』ながら雪のように白い花が咲いている。『サンクチュアリの花』だ。 「ああ、よい花が咲いたようですね」  四界皇がゆっくりと身体を起こす。 「おお! ま、まだご無理をなされては」  涙ぐむ執事が止めようとするが。 「大丈夫です。花が五分なら私も五分。それだけあれば十分ではありませんか。よく、そこまで戻してくれました。……昨年、少し無理をして咲かせ過ぎましたね」  やつれ顔のまま、愛おしそうに白い花を見やる。  その視線の先には白いテーブルが置かれ、四族の王が椅子に座りながら咲き始めた花を感慨深かげに見上げていた。 「物事が上手くいく例えで『花が咲く』というが、こんな一本の樹でさえことの何と大変なことか」  最初に口を開いたのはホエルだった。 《テクノロジー ガ 人族 丿 勘ヲ 超エル ノハ マダ 時間ガ カカリソウデス》  ヘルツもこれに同意するようだ。 「ひひひ! 魔力にも向き不向があらぁね。何でもできる訳じゃないさ」   横目でちらりと四界皇を見ながらトナエがにやりと笑う。 「最後はハオトが徹夜で蕾の面倒を見てくれた。我らはやれることを地道にこなすしかない」  ゲンゴは咲いたばかりの花から視線を外さなかった。   「四界皇様、こちらを」  執事が紙の束を渡す。 「この2日で四族の王が協議した今年の調整事項にごさいます。ハチウオや底引き漁など」 「まぁ、凄い!」  四界皇が高い声を弾ませる。 「皆さん同士でちゃんと話し合いをされたのですね。ホエルさんなぞはいつも初日で帰られるというのに」  くすくすと笑う四界皇に、ホエルがふん! と鼻を鳴らす。 「全てに合意がある訳ではない。それに、まとめ役がいないとやたらと手間が掛かるというだけだ」  まるで照れ隠しのように。 「そうですか」  ふわりと微笑んで、四界皇が空いていた椅子にゆったりと腰を降ろす。  卓の全体に漂う、何処か暖かくしっくりとする空気感。あるべきがあるべき場所に戻った安堵。 「この世界は全てが繋がってできています。花一輪と言えど連環の一部。されば『花が咲く』ことはその連環がよく回っている証。故にこの会は『花を愛でる』なのです」  そう言い終わると同時に、サンクチュアリの枝先に次々と純白の花が開き始めた。まるで雪でも降積もったかのように覆われる一面の白。  それを満足そうに見つめた四界皇が満面の笑みを称える。そして。 「遅れました。では、『花祭り』を続けましょう」  と優しく告げた。 完
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