エピローグ

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エピローグ

エイト。 まるで海底に沈んでいくようだ。 水中から見る世界は左右に優しく揺れて、次第に暗くなる。 見たか? 見たか?アンチ共。 これが見たかったんだろ? リングの上でくたばる俺が、担架で運ばれる俺が、見たかったんだろ? あの女の顔が頭によぎる。 ふーん、キックボクシングって意外と金になるんだ お前は会場にいるのか? 片目の潰れた猫にはいつ会わせてくれるんだ? そもそもお前は生きているのか? ナイン、 朦朧な意識の中、精一杯の舌打ちをする。 それと同時に口から溢れたマウスピースは転がり、糸を引き、俺とマットとを1つにする。 リングに繋がる。 死のう。 今夜、真っ暗な部屋の中で死のう。 絶対。 死んでやる。 目を瞑る。 テン。 瞼の裏で、レフェリーが手をクロスにする。 試合が終わった。 爆発のような歓声、叫び声がアリーナに響き渡る。 1R57秒だった。
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