黒竜を駆る

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    「そっちへ行ったぞ、ブレント!」  耳にかけた魔導通信具を介して、隊長の指示が飛んできた。 「はい!」  短く答えた僕は、空で敵を待ち受ける。  すぐに三匹の竜が、左の山をぐるりと迂回して現れた。背中にはもちろん竜騎兵を乗せている。  その姿が見えるや否や、僕の竜は業火のブレスを吐き出した。 「馬鹿な!? まだブレスは届かない距離……」 「見ろ、黒い竜だ! 例の『黒き流星(ブラック・スター)』だ!」 「ぎゃああっ!」  敵兵たちの騒ぎが風に乗って聞こえてくるが、長くは続かなかった。あっというまに炎に包まれて、彼らは地上へと堕ちていくのだから。  一仕事終わらせて、僕は小隊の合流ポイントへ。  仲間たちは既に戻ってきていた。 「さすがは『黒き流星(ブラック・スター)』、またお手柄だったな!」 「あいつの竜、自分で手懐けた野生の竜なんだろ? 俺たちみたいな支給された竜と違うのも当然だよなあ」 「フン。訓練生時代はグズでノロマのブレントだったくせに、たまたま竜を見つけただけで……」  素直な賛辞だけでなく、やっかみも混じっていた。昔から一緒のジャクソンだ。  昔は大きな顔をしていた彼も、正規の竜騎兵として配属された今では、すっかり立場が変わっていた。  小隊の先輩たちから注意されている。 「よせ、ジャクソン。竜を扱う才能、それこそが竜騎兵にとって最も大事なのだ。他の少々のマイナスなど問題にならん」 「『たまたま竜を見つけた』と言うが、重要なのはその先だ。お前が竜に出会っても、飼い慣らすどころか逆に返り討ちじゃないのか?」    それらを耳にしながらも僕は何も言わず、隊列の最後尾に並んだ。  同時に心の中では「ジャクソンの発言、あながち間違ってないかも」と考えてしまう。  僕と黒竜との出会いを、改めて思い返してみれば……。    
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