4人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっちへ行ったぞ、ブレント!」
耳にかけた魔導通信具を介して、隊長の指示が飛んできた。
「はい!」
短く答えた僕は、空で敵を待ち受ける。
すぐに三匹の竜が、左の山をぐるりと迂回して現れた。背中にはもちろん竜騎兵を乗せている。
その姿が見えるや否や、僕の竜は業火のブレスを吐き出した。
「馬鹿な!? まだブレスは届かない距離……」
「見ろ、黒い竜だ! 例の『黒き流星』だ!」
「ぎゃああっ!」
敵兵たちの騒ぎが風に乗って聞こえてくるが、長くは続かなかった。あっというまに炎に包まれて、彼らは地上へと堕ちていくのだから。
一仕事終わらせて、僕は小隊の合流ポイントへ。
仲間たちは既に戻ってきていた。
「さすがは『黒き流星』、またお手柄だったな!」
「あいつの竜、自分で手懐けた野生の竜なんだろ? 俺たちみたいな支給された竜と違うのも当然だよなあ」
「フン。訓練生時代はグズでノロマのブレントだったくせに、たまたま竜を見つけただけで……」
素直な賛辞だけでなく、やっかみも混じっていた。昔から一緒のジャクソンだ。
昔は大きな顔をしていた彼も、正規の竜騎兵として配属された今では、すっかり立場が変わっていた。
小隊の先輩たちから注意されている。
「よせ、ジャクソン。竜を扱う才能、それこそが竜騎兵にとって最も大事なのだ。他の少々のマイナスなど問題にならん」
「『たまたま竜を見つけた』と言うが、重要なのはその先だ。お前が竜に出会っても、飼い慣らすどころか逆に返り討ちじゃないのか?」
それらを耳にしながらも僕は何も言わず、隊列の最後尾に並んだ。
同時に心の中では「ジャクソンの発言、あながち間違ってないかも」と考えてしまう。
僕と黒竜との出会いを、改めて思い返してみれば……。
最初のコメントを投稿しよう!