友達なんかじゃいられない

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「達也おはよう」 「瑛太おはよ」  家を出ると瑛太がすでに待っていてくれた。  昨日までとは関係が変わり、照れ臭さから俯いてしまう。  手をそっと握られた。 「子供の時以来だね。手を繋ぐの」 「そうだな」 「もう子供じゃないけど、これからはいつでも達也と手を繋げるんだね」  花の綻ぶような笑顔に、やっぱり瑛太が好きだな、と心が晴れる。昨日までの鬱々とした気持ちとは全く違った。 「あのさ、お願いがあるんだけどいいか?」 「何? 何でも言って!」 「昨日、連絡先交換したって言ってただろ? 消して欲しいな」 「ああ、それならもう消してあるよ。見る?」  首を振った。瑛太が消したと言うなら、本当に消したのだろうから。  人通りの少ない道では手を繋ぎ、大通りに差し掛かる手前で離した。また2人になった時に繋ごうね、と耳元で囁かれて頷く。 「達也、聞いてくれよ!」  教室に入ると、合コンを企画したクラスメイトが俺に駆け寄ってきた。 「どうした?」 「昨日の瑛太がさ、合コンなのに恋愛相談始めるんだぜ? 彼女作りに来た場所で、何でそんな話するんだよって女の子たちも最初は冷めてたんだよ。でも、瑛太が一途で健気だからか女の子たちも次第に真剣に相談に乗ってさ。合コンで瑛太に女の子みんな持ってかれるのは想定してたけど、恋愛相談でみんな持ってかれるとは思わなかったわ。ひどくね?」  俺に暴露されてる間、瑛太はクラスメイトの口を押さえようとしていたが、別のクラスメイトに羽交い締めにされて身動きが取れなくなった。顔を真っ赤にして、達也には言わないで、と叫んでいたけど口も手で覆われる。  別にクラスメイトは怒っているわけではない。瑛太をよく知る俺に、自虐を含んだ瑛太の笑い話を聞かせようとしただけだ。まさか瑛太の相手が俺だとは思っていなくて。  解放された瑛太は、恥ずかしい、と顔を覆ってしゃがみ込んだ。クラスメイトはその背中を何度も叩く。 「うまくいったら紹介しろよ!」  笑いながら離れていった。  瑛太を立たせて、空き教室に引っ張っていく。扉を閉めて瑛太の正面に立って顔を覗き込んだ。 「恋愛相談してたのか? デートっていうのは嘘?」 「どうしたらいいか分からなくて距離を取ってる最中だ、って言ったら、そう言って相手の反応見て、脈ありかなしか教えてって言われて」 「連絡先消したってのは?」 「『アドバイスありがとうございました。付き合えることになったので、連絡先消します』って報告して消した」  ホッとした。最初から瑛太は俺の知らない誰かと付き合おうと思っていなかったんだ。 「ずっと好きでいてくれてありがとう」 「これからもずっと達也のことが好きだよ」  瑛太は顔を染める。俺もきっと赤い。恥ずかしいけど嬉しくて笑い合った。  
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