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「あの時はありがとう!俺が遅刻したのに(みお)ちゃんが......」 同じ受付担当の住田(すみだ)先生や他の生徒の目が一斉にこちらを向いた。私は慌てて浩太(こうた)くんの分の花飾りを掲げる。 「私が場所を間違えたんでしょっ?ほら、それよりお花付けるから胸貸してね?」 素直にかがんでくれた浩太(こうた)くんに少しだけ目を見張る。受験の日はそこまで頭がまわらなかったけど、かがむほどに背が伸びていたんだと内心ビックリしたから。 「大きくなったんだねぇ」 しみじみと言いつつ目の前の胸ポケットに花飾りを付けていると、浩太(こうた)くんがガシッと力強く私の両肩に触れてくる。 「んっ?どうしたの?」 「(みお)ちゃんの優しさがすっごく嬉しかった!俺、小学校のときからずっと(みお)ちゃんのこと……」 なんだか切羽詰まったような形相の浩太(こうた)くんの胸ポケットに祝花を収めたところで、私たちの頭に桜の花弁がフワフワと舞い落ちてくる。 「あれ、もう花びら舞ってるね」 雪のように降ってくる花びらを見つめた浩太(こうた)くんは急にしゃべるのを止めて、かわりに思い切り深呼吸した。 「(みお)ちゃん!明日、俺とお花見してほしい。ほら、小学校の時に一緒に歩いた遊歩道で」 「お花見……?」 あからさまに嫌な顔をしてしまって、あわてて両手で頬を隠すように包み込む。 「ごめん。今変な顔したのは浩太(こうた)くんとお花見するのが嫌なんじゃなくって、その……。独りきりで場所取りするのが、もう嫌で……」 無料の場所取りさんは、もうやらずに済みそうだけど。独りポツンと桜を眺めるお花見なんて……ただ寒くて寂しいだけだ。
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