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「は?登校班で無視されてる?入谷(いりや)の気のせいじゃないのか?」 担任の先生に相談してみたこともあったけど、相手にしてもらえなかった。 ...... 「(みお)ちゃんおはよう。具合悪そうだけど大丈夫?今日もごめんね」 「え?あ、いいんだよ。転校してきて大変だよね。今日は近道していこうか」 心配そうに見上げてくる幼顔に、必死に笑顔を作ってみせる。男の子……遠山浩太(とおやまこうた)くんは確かにかなりおっとりしているけど優しい子だ。 そういえば私も学校の準備って未だに苦手。手間取ったり印鑑が必要なプリントを出し忘れてたりして、朝からお母さんに怒られることもある。 「この遊歩道、広くていいでしょ?ここ抜けたらもう学校だし。ギリギリセーフだから遅刻じゃないよ」 自分を励ますようにも言ってみたけど、返事がない。横を向くと誰もいなくて、慌てて振り返る。浩太(こうた)くんはランドセルをこちらに向けて、まっすぐに顎を上げていた。 「なにしてるの?」 「空を見てた」 「空?」 見上げれば真っ青な空に桜の花々が生える、まぶしい光景が広がっている。 「桜花(おうか)爛漫(らんまん)」 「え?」 「おばあちゃんによく言われた。お花見ってワクワクするね」 桜花爛漫(おうからんまん)って、四字熟語じゃない?漢字の間に「も」は入らなくない?「も」ってことは、他にも爛漫(らんまん)なものがあるってこと? 色々聞きたかったけど、どれも言葉にならなかった。眩しい笑顔を向けてくれた浩太(こうた)くんが、その時間だけ私の憂鬱を忘れされてくれたから。
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