15人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「は?登校班で無視されてる?入谷の気のせいじゃないのか?」
担任の先生に相談してみたこともあったけど、相手にしてもらえなかった。
......
「澪ちゃんおはよう。具合悪そうだけど大丈夫?今日もごめんね」
「え?あ、いいんだよ。転校してきて大変だよね。今日は近道していこうか」
心配そうに見上げてくる幼顔に、必死に笑顔を作ってみせる。男の子……遠山浩太くんは確かにかなりおっとりしているけど優しい子だ。
そういえば私も学校の準備って未だに苦手。手間取ったり印鑑が必要なプリントを出し忘れてたりして、朝からお母さんに怒られることもある。
「この遊歩道、広くていいでしょ?ここ抜けたらもう学校だし。ギリギリセーフだから遅刻じゃないよ」
自分を励ますようにも言ってみたけど、返事がない。横を向くと誰もいなくて、慌てて振り返る。浩太くんはランドセルをこちらに向けて、まっすぐに顎を上げていた。
「なにしてるの?」
「空を見てた」
「空?」
見上げれば真っ青な空に桜の花々が生える、まぶしい光景が広がっている。
「桜花も爛漫」
「え?」
「おばあちゃんによく言われた。お花見ってワクワクするね」
桜花爛漫って、四字熟語じゃない?漢字の間に「も」は入らなくない?「も」ってことは、他にも爛漫なものがあるってこと?
色々聞きたかったけど、どれも言葉にならなかった。眩しい笑顔を向けてくれた浩太くんが、その時間だけ私の憂鬱を忘れされてくれたから。
最初のコメントを投稿しよう!