1. 突然の再会

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1. 突然の再会

 3月最後の土曜日の昼下がり。  美由紀がいつものように、喫茶店Mの窓辺の席に腰を下ろした時だった。  速足で近づく足音に続いて、若い男性の声がした。 「あの、すいません。ここに携帯無かったですか?」  顔を上げた瞬間、美由紀は固まった。  それは、相手も同じようだった。  少しの間の後で、 「もしかして、辻村さん?」  先に相手が口を開いた。 (やっぱり、隼人くんだ!)  7年振りに聞く彼の声。 美由紀は、飛び出しそうになる心臓を飲み込みながら小さく頷いて、 「菅田(すだ)くん?」  高校時代の呼び方で訊いた。  人見知りな美由紀が、高校時代、密かに思い続けていたひと。  表向きは苗字で呼んでいたけど、心の中ではずっと「隼人くん」だった。 「そうそう。辻村さん、久しぶりだね……」  社交的で、クラスのリーダー的な存在だった彼は、そう言って満面の笑みになった。 (この笑顔!)  そうだった。  人懐こくて、安心感のある笑み。それを、どんな時でも絶やさないようなひと。  頭が良くて、誰にでも公平に優しい。  だからモテていた。自分の出る幕などないと思っていた。 「お客さまぁ、こちら、お客様のではないでしょうか?」  突然、脇から声がして、隼人が振り向くと、男性の店員がスマホを見せている。 「あっ、これです。すみません」  バツが悪そうにスマホを受け取ると、 「じゃ、人が待ってるんで」  手を上げて立ち去ろうとしてから、「そうだ」と、胸ポケットから一枚の名刺を取り出し、 「よかったら連絡して。今帰省してて、明後日までこっちにいるんだ」  と、テーブルの上に置いて、慌ただしく去っていった。  
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