1. 突然の再会

2/2
前へ
/9ページ
次へ
 窓の外に目を向けると、隼人が3人の男女と合流するのが見えた。  そのうちの一人に、見覚えがあった。  神野恵理。  人見知りせず、すぐに誰とでも仲良くなれる、やはり高校3年時のクラスメート。  当時、隼人とも仲が良くて、いじり合っているのを目の当たりにしていた。  お似合いに見えた。  美由紀にとって、二人は別の世界の人たちに思えた。  だから、羨ましいと思うことはあっても、嫉妬することはあまりなかった。  隼人を毎日見られるだけで、幸せだった。  4人はそれから、向かいのカラオケ店に入っていった。 (やっぱり、付き合ってたんだ……)  肩を並べる隼人と恵理を見送りながら、美由紀は、今さらながら軽く嫉妬している自分に気がつく。 (何を期待してたの?)  苦笑しながら、自分に問いかける。そして、もらったばかりの名刺に目を向ける。 『株式会社○○ 京都事業所 菅田隼人』 (今も京都にいるんだ)  小田原市内の高校を出て、現役で京大に入った彼。  美由紀は、地元の短大を出て、今は保育士をやっている。  傍ら、幼い頃からずっと本が好きだった美由紀は、子供たちに絵本の読み聞かせもしている。 (帰ったら、LINEしてみようかな……)  名刺を見つめながら、ホットコーヒーをひと口。  それから、本を読もうとして、文庫本に挟んでおいた栞を外す。けど、字面を追うだけで一向に頭に入らず、何度も同じページを読み返す。  諦めて、開いたままの本をひっくり返し、テーブルに置く。そして、窓越しに、カラオケ店を眺める。 (歌ってるんだ……あの時みたいに)  美由紀は、7年前のことを思い出していた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加