第0話 私の決意

1/1
前へ
/19ページ
次へ

第0話 私の決意

 私には恋をする資格なんてないのかもしれない。  そう、高校生ながらに悟った。  公立高校に通う二年の観月雪(かんづき ゆき)は恋多き少女だ。  少しのことで靡いてしまうチョロい恋心に、恋愛経験値を高めに配合すると完成する女の子。  この一文で私の自己紹介は完結すると思う。  恋愛に関しては…  恋が絡まない私は普通の女の子だ。  おしゃれと噂と可愛いものが好きなただの女子高校生。  友達も優しくて可愛くて、ヒロイン級の美女ばかり…  それに加えて、頭もいいのだ。  私は友達には恵まれていると思う。  私の家族は、両親とお兄ちゃんの四人家族。  末っ子ならではの愛情と猫可愛がりを受けて、ここまで成長してきた。  私の恋愛問題に関して、一度だけ環境が問題なのではないかと言われたことがある。  そんなことない。  私はそう言い張っている。  だからきっとこの恋愛問題は、環境が問題ではなく、本体自体の問題なのだ。  最近は良く「カエル化現象」という言葉が多く使われている。  私はその現象の悪化版みたいなものだ。  恋に恋する、恋多き少女。  それが私。観月 雪だ。  私は恋する自分や好きな人に恋しているのではない。  恋という現象に恋している。  そう言う方が正確だと思う。  今までも人を好きになって、付き合った。  ただ、その人自身の好きなところが“ない”のだ。  告白されたから付き合うとか、気になったから付き合う。  そんな感じで付き合ってきた。  女子は恋バナが大好きだ。  ある人の好きな人は誰かだとか、付き合ってるカップルについて。  恋バナが出ると必ず好きな人や恋人がいないのか聞かれる。  私はとりあえず、かっこいいと思った人の名前を毎回挙げていた。  話についていけないからとかではない。  聞かれるから答えているだけ。  ただ、それだけだ。  女子は恋バナの次に噂が好き。  きっとこの一文で気づく人もいるだろう。  私の好きかもしれない人は瞬く間に好きな人として広まって行く。  気づいた時には相手にも伝わっているのだ。  そして毎回、私の気づかないうちに両想いになっている。  相手が好かれていると勘違いして、告白されて付き合う。  私にとっての恋愛はこういうものだった。  だから私は相手の好きな所を答えられない。  答えられても上澄みだけの回答になってしまう。 「君が本当に僕のことを好きなのか分からなくなった」  私はそう言われて、毎回振られる。  そりゃそうだ。  私自身も本当に相手のことが好きなのか分からないのだから。  どんなに相手を好きになろうとしても、気持ちに真摯に向き合おうとしてもできない。  きっと私は一生、人を好きになれない気がする。  失敗し続けると人は可笑しくなるらしい。  私はもう十五回以上失敗してきた。  もう嫌なのだ。恋愛は…  そんな理由で恋愛することを諦めていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加