紅(くれない)の剣(つるぎ)と黒き仮面

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 その夜、王妃は王宮を忍び出ると、夜道を駆け抜け、妹の家に急ぎました。  妹の家にたどり着いたとき、王妃は疲れ果てていました。  妹は王妃である姉の変わり果てた姿に驚きました。 「姉さん、どうしたの?」  妹の問いかけに、王妃は「助けて」と言うと、その場に倒れてしまいました。  翌日、王妃は意識を取り戻すと、妹に事情を話しました。  妹はしばらく考えていましたが、良い考えを思いついたようです。 「姉さん、魔法使いの望みをかなえる貴石を造ってください。そうしないと王子は助かりません」  妹の考えに王妃は驚きます。 「でも、そのようなことをすれば、魔法使いが国中の富を独り占めしてしまいます」  それに対して、妹は落ち着いて答えました。 「ええ、まずは貴石を造って油断させましょう。そして王子が目覚めてから、魔法使いを退治すればよいのです」  王妃は妹を信じて、王国中の富を集める貴石を造りました。  完成した貴石はくろい光を放っています。  妹は王妃から貴石を受け取ると仮面の額にはめ込みました。 「仮面をつけさせれば、魔法使いの目を封じられます。国中の富が集まってくるあいだは、魔法使いは魔法を使うことはできません」 「でも、必ず魔法使いを退治できますか?」 「仮面の貴石を割るちからを与えた貴石を私が造ります。それを剣にはめ込めば、魔法使いを退治できるでしょう」  と妹は王妃を励まして言いました。  王妃は妹の言葉を信じ、仮面を抱いて王宮に戻りました。  王妃は魔法使いのところに行って、仮面を差し出しました。 「この仮面には特別なちからを込めた貴石をはめ込んであります。これを被れば、国中の富が集まってくるでしょう。早く、王子の魔法を解いてください」  魔法使いは仮面を受け取ると、たいへん喜びました。 「約束だから、王子の魔法を解いてやろう」  魔法使いは約束どおり、すんなりと王子の眠りの魔法を解きました。  しかし、魔法使いには、何か悪だくみがあるようです。
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