紅(くれない)の剣(つるぎ)と黒き仮面

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 王子が目を覚ますと、王妃は我が子を抱き寄せました。  その背後から魔法使いの笑い声が聞こえます。  王妃が振り返ると、魔法使いが仮面をつけているのが見えました。 「すばらしい! ちからがあふれてくるぞ!」  魔法使いは喜びの声をあげています。  そして、仮面にはめ込まれた貴石からは、くろい光が放たれています。  しばらくすると、扉から王宮の召し使いたちが姿を見せました。  彼らの顔には表情がなく、まるで何かに操られているかのようです。  召し使いたちは、王妃と王子を捕まえました。 「あなたたち、なにをするの! はなしなさい!」  王妃と王子は抵抗しましたが、王宮の外に引っ張られていきました。  二人が王宮の外に放り出されると、そこには王様がいました。  王様は隣国から帰ってきたのに、王宮に入れなかったようです。  すでに王宮は魔法使いに乗っ取られていました。  王国中の富を集めるために魔法使いの考えていたことは、まず自分が王様になることだったのです。  王妃はその場に泣き崩れました。  王様は、「なぜ泣くのですか?」と優しい口調で尋ねました。  王妃は正直に、「魔法使いに脅されて、貴石をはめ込んだ仮面を渡してしまったのです」と王様に話しました。 「それは王妃のせいではない。私も王様として贅沢な暮らしに慣れてしまい、このような災いを招いてしまったのだろう。それよりも、王妃や王子、それに国民たちに申し訳ないことをした」  と、王様は王妃を慰めました。  王様は気持ちを切り替えて、「もう王宮には戻れそうもない。ならば、私たち家族だけで暮らすことにしよう」と言いました。  こうして家族そろって王都の外れに家を建てて質素に暮らし始めました。  そのころ、妹のほうも、仮面の貴石を砕くちからを与えた貴石を造り、剣にはめ込みました。  その貴石は、あかい光を放って輝いています。  妹は剣を抱えて、王妃の家を訪ねました。  妹は王様に、「私がいまから魔法使いを退治しに行きます」と言いました。  王様は魔法使いの欲深さを知っているので、「魔法使いに、この剣を差し上げると申し出れば、容易に近づけるでしょう」と助言を与えました。  妹は王様にお礼を言うと、王都に向かいました。
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