180人が本棚に入れています
本棚に追加
スタンピード
「えっ、嬢ちゃんが?」
「はい」
しばらくしてやって来た、ギルド長に案内された私は、応接室のソファーで簡単な挨拶と自己紹介をしていた。目の前に座っているギルド長と呼ばれた人物は、期待を裏切らない『むさ苦しい』感じのするギルド長だった。
「すまない。人は見た目で判断しちゃいけねぇとは思っているんだが、思ったより幼く・・・・・・いや、可愛らしかったんで」
「構いません。そう思われて当然だと思います」
先日、誕生日を迎えて16才になったところだったが、どういう訳か学園の結界内では身長が一切伸びなかったのだ。まだ子供に見えても仕方がないだろう。
「そう言って貰えると助かる。ところで、嬢ちゃんは魔術学園の出だったな?」
「はい」
「じゃあ、実戦経験は・・・・・・」
「ありません」
「どうしたもんかねぇ」
「・・・・・・」
私の返答を聞いてギルド長は明らかに顔を顰めていた。難しい討伐依頼だろうか・・・・・・ギルドから討伐依頼される魔物は、討伐の難しさからSS~Eまで分類されており、先生からはS級の魔物までだったら1人で討伐しても大丈夫だと、お墨付きを貰っていた。油断しなければの話だとは思うのが・・・・・・。
「そう言えば、嬢ちゃんはどうしてこの街に来たんだ?」
「それは・・・・・・」
私は無実の罪で国外追放されたこと、学園で魔術を習得したこと、母から帰ってきなさいというメッセージを受けて、国へ帰る途中だという事を簡単に説明した。
「ちょっと待ってくれ・・・・・・てことは何か? 嬢ちゃんは国に戻ったら、52才になってるってことか?!」
「いえ・・・・・・記録上は、そうかもしれませんが、実際に生きてきた期間は16年です」
「あっ、うん。そうなんだけど・・・・・・国に帰るのは怖くないのか? 自分を国外追放した人達がいるんだぞ。今の王城だって、どうなっているか分からない」
「全く怖くないと言えば嘘になります。でも、考えても考えても、どうすればいいのか分からなくて・・・・・・後悔する前に、母にだけは会っておこうかと」
「全く何てことだ・・・・・・タイミングもタイミングだな」
「どういうことですか?」
「スタンピードだ」
「スタンピード・・・・・・」
聞いたことがある。講義で何回も聞いていたし、前世のアニメでも主人公達がスタンピードで苦しめられるのを何度か見ていた。
魔物の大量発生で、倒しても倒しても後から湧くように出てきて、下手をすると1週間以上の戦闘になると言われている。1番長い時で1ヶ月戦ったという記録もある。そんな時は、国が1つ崩壊したり都市が1つ壊滅することも珍しくはない。
「なんてこった・・・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!