帰省

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帰省

 学園で魔術を教わるうちに、『私みたいに困っている人がいたら、手を差し伸べられる人間になろう』と、いつしか思うようになっていた。  火・水・土・風・光・闇の内、比較的扱いやすい、火と水、それから風と土属性の魔術に力を入れて訓練を行っていた。ユグドラ学園は2年間学ぶと、研究を続ける者以外は、何処かの国の魔術師団に所属するのが慣例であり、時期が来ると学園長と面談を行うと聞いていた。  夏休みに入ってからも、1つ年上の先輩達は面談が終わらずに、順番に学園長と面談をしていたが、同じクラスの他の子達は、いつの間にか帰省していた。 「シャルロットさん!! まだ残っていたのですか?!」  私は上手くいかない『的当て』を訓練場で行っていた。魔術もペーパーテストも出来ていない私は、メリーに合わせる顔がないと思っていた。 「先生。魔術が上手くいかなくて・・・・・・」  先生は何かを察したのか、額に手を当てると溜め息をついてから言った。 「シャルロットさん、今すぐ家に帰りなさい。あなたは・・・・・・国に帰れないのかもしれませんが、ソレイユ村には、あなたを連れて来た婦人が、今も1人で住んでいるのでしょう? 会えなくなってしまう前に、一度でいいので元気な姿を見せてあげなさい」 「会えなくなってしまう?」 「学園長から聞いてないのですか? でもパンフレットに・・・・・・ああ、すれ違いになってしまったのですね。ここ、ユグドラ学園は結界の外と中で時の流れが異なります。ここでの生活の1年は、結界の外の時間の25年に当たります」 「えっ、じゃあ・・・・・・」 「結界の外では、既に10年以上の月日が流れているでしょう」 「そんな!! メリー!!」  私は教科書を地面に投げ出すと、寮へ向かって走り出し、どうやって自分が外出許可をとったのかも訳が分からないまま、荷物をまとめるとソレイユ村に向かったのだった。
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