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ご馳走
メリーの家に着くと、メリーは家の前を箒で掃いていたが、私に気がつくと満面の笑みを浮かべて、こちらを振り返った。
「お帰りなさい、お嬢様」
「メリー、私、私・・・・・・」
「まぁまぁ、こんなに大きくなって・・・・・・こんな所では、なんですから中へお入りなさい」
「はい」
少し腰の曲がってしまったメリーは、涙目になってしまった私の肩を叩くと、家の中へ一緒に入っていった。
「今日は久しぶりの再会ですからね・・・・・・お嬢様の好きな物を作りますよ。夕飯は子羊のシチューでよろしいですか?」
「メリーの作る物なら何でも美味しいから、何でもいいわよ」
「お嬢様、準備してきますね。紅茶はこちらに置いておきますので、お好きなときにお飲みください」
「ありがとう、メリー。前にも言ったけど、もう気を使わなくてもいいのよ」
「私のコレは、趣味みたいなものですから・・・・・・」
台所から料理を準備している音が聞こえて、私は思わずメリーに聞いていた。
「メリーは知ってたの? 学園の中では、時間の流れが遅いこと・・・・・・」
「旦那様と奥様も、ご存じでしたよ。国外追放が本人にとっては2年になる。2年と50年では、随分違うし人生をやり直せると、お思いになったのでしょう」
「でも、それでは帰った時に私の知っている人はいなくなってるわ」
「案外、その方がいいのかもしれないと旦那様は、仰っていましたわ」
「メリー・・・・・・」
「旦那様と奥様は出立の日、見送りに来なかったのではなく、来られなかったのです。娘を辺境の地へ追いやることでしか助けられなかったこと。もう、二度と会えない可能性が高いことを考えると、お二人とも辛くて見送りになんて来れなかったのです」
「学園を卒業したら、メリーの所へ行ってもいい?」
「構いませんが、その頃には私はいなくなっているでしょう」
「メリー、私はどうしたら・・・・・・」
「お嬢様、お嬢様は好きなように生きていいのです。国へ帰っても構いませんし、旅に出ても構いません。少ないですが、この家と財産はお嬢様に残しておきましょう。村長にも言っておきますので、国へ帰って居場所がなかったら、この家に帰ってくればいいんですよ」
「ありがとう・・・・・・メリー」
「お嬢様、前菜が出来ましたよ。お嬢様の好きなトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼです」
「・・・・・・いただきます」
私は最後になってしまうかもしれないメリーの夕飯を、涙を堪えながら全て平らげたのだった。
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