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そして、閉ざされた窓の向こうから、少女が頬杖をしながら、揺れるカーテンの軌道を追っていた。
僕に何か話し掛けてきたが、全く以て聞こえなかった。しかし、何と言ったか分かりたい、と切にねがった。
今思えばそれが、運命の出会いだった。
次の日も体育館に来た。
驚くべきことなのだが、僕が部活の匂いだと思っていたものは、青草の匂いだったのだ!
体育館の裏手の崖はかなり茂っている。自然の床に就き、木の洞で風雨を凌いでいる草刈り業者が、毎日働いているのだ。
今日もカーテンが揺れていたので、深窓の令嬢が佇んでいるか、確認しに上がった。
彼女は昨日と同じ格好で待っていた。
窓枠には薬瓶が置かれていた。彼女も自分用の薬瓶をポケットから出し、僕にも勧めた。
僕たちは無言の乾杯で、便の中の酷く透明な液体――夏に丁度良いラムネの様な風味で、青草の香が頬を撫でた!――を飲み干した。
彼女は、瓶の半分しか飲んでおらず、一気飲みした僕を見て、ケラケラと笑った。
いや、声の響は窓ガラスで遮られた。でも、日に日に彼女の声を上手く想像できるようになっている。
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